書籍のまとめノート

投資リスクを読み取ろう!疑義注記とは?

株式投資をするのであれば、できるだけ業績好調で倒産リスクの無い銘柄を選びたいものです。売上やEPSといった指標は、企業の成長速度や株式そのものの価値を示してくれますが、その銘柄に隠れたリスクまでは教えてくれません。

成長著しい企業でも資金繰りが悪化してしまうと経営破綻、つまり事業が継続できなくなってしまいます。仕事が出来なければどれだけ素晴らしい技術・能力を持っていたとしてもその企業に価値はありません。企業は継続することが大前提なのです。

企業が今後も継続していけるのか?そのためのリスクを示してくれる情報として、継続企業の前提に関する注記:疑義注記というものがあります。この記事では投資リスクを教えてくれる疑義注記について解説していきます。

この記事でわかること

■ 疑義注記・重要事象が示す意味を理解できる
■ 債務超過がどういう状態か理解できる
■ 監理銘柄・整理銘柄とは何か?が理解できる

疑義注記はリスクのサイン

企業の決算短信を読んでいると、継続企業の前提に関する注記という文言が併記されていることがあります。下記は株式会社ホープ(6195)の2021年6月期 第3四半期決算短信の抜粋です。ご覧のように継続企業の前提に関する注記が記載されています。ゴーイングコンサーン(Going Concern)ともよばれ、疑義注記・CG注記と略されることが多いです。

企業の財務諸表は事業が将来に渡って継続していくことを前提として作られます。ただ、いったん経営破綻してしまうと企業の継続ではなく、現在企業が保持している資産がいくらで売れるか?という観点から再評価されることになります。

こうなると財務諸表の作り方が大きく変わってしまいます。破綻している企業の資産ですから、通常の経営状態のと同等の資産評価はしてもらえず、本来の価値よりはるかに低く評価されることになります。

事業を継続しようとしている企業が資産を売る前提で財務諸表を作るわけにはいきませんので、あくまで今後も事業を継続する前提で財務諸表をつくっていますよ~ということを注記を併記することで宣言しているのです。 これで投資家は投資リスクを判断することができます。

 

疑義注記とよく似ている情報として継続企業前提に関する重要事象というものもあります。内容はほぼ同じものですが、疑義注記のほうがリスクとしては高くなります。

当然のことですが、疑義注記や重要事象が記載されている銘柄は、債務超過・赤字が続いているなどといった事象が発生しているため、倒産リスクはかなり高いものになります。よほどのことが無い限りはこれらの注記が出ている銘柄に投資することは止めておいたほうがいいでしょう。

疑義注記銘柄の一覧は下記のリンク先から確認することが出来ます。自分が注目している銘柄に疑義注記が出ていないか必ず確認しておきましょう。

https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/attention/stock/margin_M02.html

債務超過ってどんな状態?

業績が悪化している企業についてまわる債務超過という言葉。この定義もしっかり押さえておきましょう。債務超過は負債を返済する義務である債務を返済することが出来ない状態を言います。

健全な企業:利益剰余金がプラス
➡ 資本金(オーナーや株主から集めたお金)を元手に利益を増やせている。投資で考えると含み益を生み出せている状況。

累積損失あり:利益剰余金がマイナスだが、純資産はプラス
➡ 元手資金である資本金に対して利益を生み出せておらず、損失が発生している。投資で考えると含み損を抱えている状況。

債務超過:純資産がマイナス
➡ 全ての資産を売却しても負債を返済することが出来ない!投資で考えると、信用取引などで自分の元手以上に損失を抱えている状態。

図解で示したように債務超過がいかにキケンな状態であるかがよく分かると思います。なお、日本取引所グループの上場廃止基準によると、債務超過の状態を1年以上解消できない場合は上場廃止となります。

これだけ経営状態が悪化してしまうと、金融機関も簡単に追加融資をするわけにはいきませんので、資金繰りも更に悪化していくでしょう。企業の継続がかなり難しくなっていることが予想されます。このような銘柄には疑義注記が宣言される可能性が非常に高いです。

整理銘柄と監理銘柄

整理銘柄は既に上場廃止が決まっている銘柄です。上場廃止は即座に実施されるわけではなく、上場廃止後1ヶ月間は取引が可能です。例えば1年間債務超過を解消できなかった銘柄はこの整理銘柄に加えられてしまい、上場廃止を待つだけとなります。再び株式市場に戻るためには再上場を目指すことになります。

監理銘柄は上場廃止とまではいかなくとも、上場廃止基準に抵触する恐れがある銘柄を投資家に周知させるために指定されます。上場廃止の恐れがなくなった場合は解除されますが、やはりリスクがあることには変わりません。

注意する必要があるのは、上場廃止イコール業績が悪いではないということです。NTTドコモのようにTOBによって親会社NTTの完全子会社になることにより上場廃止になることもあります。なぜ上場廃止になるのか?その理由を確認しておくことも大切です。

まとめ

上記のホープに関しては、グロース銘柄の一つとして注目されていた企業です。売上は現在も増え続けていますが、実は業績が悪化しているという状況です。売上もたしかに大事ですが、企業の成長ばかりに着目しているとリスクを見落としてしまいます。

破綻する銘柄に投資することは株式投資をする上で最も避けなければいけないことです。投資家に警告を与える疑義注記・管理/整理銘柄・債務超過などといったサインを見逃さないことが大切です。成長性だけでなくリスクにも注意して銘柄を選定することで自分の資産を守りましょう。自分の資産は自分でしか守れないのです。

参考書籍

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ハリー@投資ノート
株式投資勉強中の30代エンジニア 方眼のノートを駆使して 投資の基礎知識・書籍のまとめを作成しています わかりやすいノートの作り方もアウトプットしていきます